口腔病態診断科学講座 歯科放射線医学部門

講座紹介

「百聞は一見にしかず」――これは、私たちが歯科放射線学に取り組むうえで、常に意識している言葉です。治療における課題や不確実性を、画像という「見える情報」によって明らかにし、最適な治療へと導くことが私たちの使命です。
放射線画像は、歯科中国竞彩网における診断の精度を高め、治療の安全性?確実性を支える重要なツールです。歯や顎骨などの硬組織の内部構造を非侵襲的に観察できる放射線検査によって、見えない病変や進行状態を把握し、適切な治療方針を立てることが可能となります。
今後も、より多くの情報を画像から引き出し、中国竞彩网現場における意思決定を支援する技術や知見を提供してまいります。
画像検査はもはや補助的な手段ではなく、中国竞彩网の質を根本から支える「見える知識」です。歯科放射線学の可能性を広げるため、日々研鑽を重ねてまいります。

学生のみなさんへ

「放射線学って、意外とおもしろい」
「高校で物理をやっていないから、放射線なんて無理かも…」
そんなふうに思っている方、心配はいりません。その先入観、ぜひ捨ててください。
実は放射線というのは、特別なものではなく、私たちの身のまわりにいつも存在しています。人からも、壁からも、食べ物からも、そしてあなた自身からも、放射線は出ているのです。
歯科放射線学では、そうした放射線の性質を「上手に?安全に」使って、診断や治療に役立てています。
たしかに、時には計算式が出てくることもあります。でも、それらも噛み砕いて説明すれば、ちゃんと「意味のある言葉」になります。少しずつ理解していけば、大丈夫。難しそうに見えても、学んでみると意外とシンプルで、何より興味深い内容がたくさんあります。
この分野には、
「見えないものを見る力」
「人の健康を支える力」
「科学のしくみを日常に応用する知恵」
が詰まっています。
まずは、「やってみよう」「わかってみよう」という気持ちで、扉を開いてみてください。
放射線学の世界が、きっと新しい発見と楽しさを運んできてくれます。

研究テーマ

当教室では、「治療の問題を画像で解決する」ことをキーワードに、以下のような研究に取り組んでいます
?画像から得られる情報量を最大化する解析技術の開発
?撮影装置の性能差による診断精度の比較研究
?画像を通じた口腔内疾患と全身疾患の関連分析
?被ばく線量を抑えるための撮影法および機器の工夫
?AIを用いた画像診断支援とオーラルフレイルの評価

講座員

教員(専任)

役職 氏名 name
教授 松田 幸子 Matsuda Yukiko
講師 黒田 沙 
Kuroda Migiwa
助教
小清水 有里子 Koshimizu Yuriko
助教 笹間 雄志 Sasama Yuji

教員(兼任)

役職
氏名name
特任教授荒木 和之
Araki Kazuyuki
兼任講師
花澤 智美
Hanazawa Tomomi
兼任講師原瀬 裕一
Harase Yuichi

職員?医局員

役職氏名name
研究補助員加藤 久美子Kato Kumiko


研究員レポート

?AIによる嚥下障害の早期発見の試み
嚥下障害は、オーラルフレイルや誤嚥性肺炎につながる問題として注目されています。この理由の一つとして、舌骨の低位による嚥下のタイミングの遅れがあると考えられます。以前の研究において、パノラマエックス線写真上の舌骨の位置をAIにより診断させる取り組みを行い、その精度を高めることが出来ました。今後は歯科用CTなどのパノラマエックス線検査以外の画像検査を用いた高齢者の舌骨の立体的な位置の変化についても解析を進めていきたいと考えております。
 
?治療の予後に関連する因子を推測する
画像診断における所見から、治療の予後における因子を推測することも研究しています。根尖性歯周炎における再治療の予後に関連する所見についての分析を行っています。
 
?歯科中国竞彩网での患者被曝線量を低減するためには
歯科中国竞彩网において、エックス線検査は診断、治療方針、治療結果等を知るために必要である。撮影範囲である頭頸部には、放射線感受性が比較的高い眼、甲状腺、唾液腺等があり、被曝線量は可能な限り少ないほうが望ましい。
患者被曝線量を低減するにはいろいろな方法があるが、照射面積を減少することもその1つである。口腔内の小さな範囲を撮影することは知識と技術を要することから、照射野を減少させることは再撮影の増加も懸念される。これを防ぐにはどうしたらいいか。線量測定や補助装置の提案等を行い、患者の被曝線量低減のための研究を行っている。
 
?画像検査を応用した新たな画像評価法の開発
口内法エックス画像、パノラマエックス線画像などの口外法撮影、歯科用コーンビームCT、MDCT、超音波検査など臨床で一般的に利用する画像を解析し、顎顔面領域の疾患の診断、鑑別に利用できる新たな画像評価法の開発を行っています。また同検査を利用して、全身疾患との関連や早期発見につながるような特徴の抽出なども行っており、口腔領域だけではなく、全身疾患の早期発見や予防への貢献を目指しています。
 
?パノラマX線写真を活用した嚥下機能の新しい評価法の開発
歯科中国竞彩网で一般的に撮影されるパノラマX線写真を活用し、画像に映る「舌骨」の位置や形、石灰化の状態を定量的に分析します。これにより、誤嚥や飲み込みにくさ(オーラルフレイル)との関連を明らかにし、嚥下機能低下を早期に検出する新たな方法を開発することを目指しています。
さらに、AIによる顎骨解析から得られる骨粗鬆症予見スコアを全身の骨の強さの指標として組み合わせ、舌骨所見と統合した予測モデルの有用性を検証します。追加撮影を必要とせず、近隣の歯科医院でも低コストで導入できるスクリーニング手法として、臨床現場での活用を目標としています。

研究業績(2021~)

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原著?総説?書籍
松田幸子 エックス線画像を用いた舌骨位置の変化の評価-加齢変化の傾向を探る- PAPYRUS東京都歯科医師会誌 73(5):231-236,2025

黒田 沙,花澤智美,松田幸子 当院において経験した類腱型エナメル上皮腫の3例 歯科放射線 63(2):54-62, 2023

Matsuda Y, Ito E, Kuroda M, Araki K Nakada W, Hayakawa Y A basic study for predicting dysphagia in panoramic x-ray images using artificial intelligence (AI) part 2: Analysis of the
position of the hyoid bone on panoramic radiographs Eng 4: 2542–2552,2023https://doi.org/10.3390/eng4040145

Kuroda M, Matsuda Y, Seki K, Hanazawa T, Ito E, Araki K A clinical and statistical investigation of teeth affected by eruption disturbances using cone-beam computed tomography imaging Showa Univ J Med Sci, 35(2):46 - 52, 2023

Ishida H, Araki K Quantification of gray values corresponding to bone density using dental cone-beam computed tomography Showa Univ J Med Sci 35(2), 73 -81, 2023

黒田 沙, 関 健次, 荒木和之 歯科用コーンビームCT画像と研究用模型との3D合成画像の評価 昭和学士会誌 82(6):492-501,2022

伊藤絵美,花澤智美,松田幸子, 黒田 沙,関 健次,荒木和之 硬口蓋に生じた壊死性唾液腺化生の 1 例 歯科放射線 2022;62(2):86-93

Matsuda Y, Ito E, Kuroda M and Araki K A basic study for predicting dysphagia in panoramic x-ray images using artificial intelligence (AI)- Part 1: Determining
evaluation factors and cutoff levels Int. J. Environ. Res. Public Health 2022, 19(8),4529;https://doi.org/10.3390/ijerph19084529

Ito E, Matsuda Y, Kuroda M and Araki K A novel dysphagia screening method using panoramic radiography Showa Univ J Med Sci 33(3), 74-81, 2021
学会発表?シンポジウム
小清水有里子,杉原義人,松下 翔,横田 博,松田幸子 矩形絞りを用いた口内法エックス線撮影における撮影補助連結装置の試作とその有用 NPO法人日本歯科放射線学会 第6回秋季学術大会,大阪,2025

笹間雄志,黒田 沙,小清水有里子,松田幸子 オーラルフレイル早期発見に向けた舌骨位置評価法の基礎的検討:側方セファロ画像と CBCT 画像の比較 NPO法人日本歯科放射線学会 第6回秋季学術大会,大阪,2025

松田幸子 教育講演 『頭頸部における異物と異所性石灰化を再考する』 NPO法人日本歯科放射線学会 第240回 関東地方会 第44回 北日本地方会 第32回 合同地方会, 東京, 2025

笹間雄志,小清水有里子,黒田 沙,花澤智美,荒木和之,松田幸子 骨肉腫と鑑別を要した類上皮様骨芽細胞腫の1例 NPO法人日本歯科放射線学会 第240回 関東地方会 第44回 北日本地方会 第32回 合同地方会, 東京, 2025

黒田 沙,花澤智美,松田幸子 MRIにおいて非典型的な所見を示した歯原性角化嚢胞の1例 NPO法人 日本歯科放射線学会 第65回学術大会?第21回定例総会,札幌,2025

小清水有里子,杉原義人,松下 翔,荒木和之,松田幸子,横田 博 口内法エックス線撮影における矩形コリメータによる被曝線量の低減 NPO法人 日本歯科放射線学会 第65回学術大会?第21回定例総会,札幌,2025

Yajima N, Koide Y, Okamatsu Y, Kuroda M, Araki K, Matsuda Y The association between periodontitis and relapse of systemic lupus erythematosus: a prospective observational study EULAR 2025 Congress, Barcelona, 2025

笹間雄志,黒田 沙,小清水有里子,松田幸子 オーラルフレイル早期発見のための側方セファロ画像解析における基礎的検討 第239回 特定非営利活動法人日本歯科放射線学会関東地方会,松戸,2025

小清水有里子,黒田 沙,笹間雄志,松田幸子 歯科放射線分野における歯科医師臨床研修プログラムに関するアンケート調査結果報告 NPO法人 日本歯科放射線学会 第5回秋季学術大会,盛岡,2024

黒田 沙,小清水有里子,笹間雄志,松田幸子 口内法X線撮影を用いた若年成人の前歯部歯槽骨における骨密度の定量的評価 NPO法人 日本歯科放射線学会 第5回秋季学術大会,盛岡,2024

Ikeda S, Araki K Bone quality assessment of Bone-J software for pre-operative implant therapy
2024 CED/NOF-IADR Oral Health Congress, Geneva, Switzerland, 2024

松田幸子 オーラルフレイル自動画像診断支援ソフトウェアの開発 MDF2024第2回医工連携マッチング例会,大阪,2024

早川吉彦,仲田渉,松田幸子 歯科パノラマX線画像に観察される舌骨の位置から嚥下障害リスクを予測する学習モデルの開発 第13回オホーツク医学大会,北見,2023

石田秀樹,荒木和之 歯科用コーンビームCTのグレイ値と骨密度の定量化に関する検討 第 69 回昭和大学学士会総会,東京,2022

池田昌平,荒木和之 MDCT画像に用いる-Bone J-による3次元的骨形態計測の評価 日本口腔インプラント学会 第42回中国?四国支部学術大会,山口,2022

仲田渉,松田幸子,花田脩馬,早川吉彦 機械学習を用いた歯科パノラマ X 線画像における 舌骨の検出?位置分類 情報処理北海道シンポジウム2022,札幌,2022

Matsuda Y, Hanada Y, Hayakawa Y, Araki K, Prediction of dysphagia risk by hyoid bone classification using panoramic radiographs and deep learning technology CARS (Computer Assisted Radiology and Surgery)2022, Tokyo, 2022

Matsuda Y, Ito E, Kuroda M and Araki K Pilot study for creation of artificial intelligence model for the predict of dysphagia on panoramic radiography The 13th Asian Oral and Maxillofacial Dental Radiology Society, the 61st Annual Meeting and 17th General Meeting of the Japanese Society of Oral and Maxillofacial Radiology (JSOMR), 2022 (web)

黒田 沙,花澤智美,松田幸子,野澤 道仁,関 健次,荒木和之 上顎に発生した類腱型エナメル上皮腫の1例-過去に当病院で経験した2例との比較 NPO法人日本歯科放射線学会第2回秋季学術大会,東京,2021

Matsuda Y, Hashimoto E, Kuroda M, and Araki K Panoramic radiographic imaging signs of dysphagia by gender 2021 IADR/AADR/CADR General session and Exhibition (The 99th General Session of the IADR, the 50th Meeting of the AADOCR and the 45th Meeting of the CADR), web, July 2021