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【導入編】作業療法士の仕事
実際の作業療法士の仕事の一場面
この方は、新婚さん。ご主人はサプライズを仕掛け、奥さんをビックリさせるのが大好きでした。仕事はパソコンを使ったデザイン関係。ある日、二人はプールに行きました。
さぁ、今日はどんなサプライズを仕掛けようか…
今日はこれで決まりだ!
ここにいて、ちょっと見てて
ところが、足を滑らせ、飛び込み台に頭を打ちつけた後、そのまま真下へ…。
水面に叩き付けられ… 気が付くと、病院のベッドで上を向いて寝たまま。
あれ?手や足が動かない
すっかり元気をなくしたご主人。
どうしたんですか?
ご主人は、今回の事故のいきさつをぽつりぽつりと話し始めました。
こんな体では、妻に何もしてあげることができない。私は無力だ。
パソコン…やってみませんか
こんな体じゃできるわけがない???。
先生、あの…パソコン、やっぱり、パソコンやってみたいんですけど
いいですねぇ! やりましょう!
パソコンのスイッチを入れることはできるか?
指の力がなく、まだ無理だ…じゃぁ、ここは手伝ってしまえ。
ソフトを立ち上げるために、マウスやキーの操作ができるか?
おぉ 何とかできる。
きっと、これまでパソコンを意のままに操ってきたという自信があるからこそ、今の自分の体の状態で、どのように工夫するとよいかというアイデアが浮かぶんだ。
のってきたぞ!
そして、ついに
先生、できたよ。今度、妻が来たら、見せてやるんだ。
\(^^)/
ご主人が必死に考えた、入院後初めての奥さんへのサプライズでした。それは、今、一番奥さんに伝えたいことであり、やらなければならないことで、今一番大切なことだったんですね。
27文字を打つためにご主人は自ら必死になって取り組んだということが重要であり、作業療法士はこのカラクリを仕組んだということです。
27文字を打つためにご主人は自ら必死になって取り組んだということが重要であり、作業療法士はこのカラクリを仕組んだということです。
作業療法士ってどんな仕事をするの?
作業療法は人を「作業的存在である」とみている。
作業療法は人を、「作業的存在」であると捉えます。この意味はとても深く、人というものは、何かをしないではいられない存在であるということを意味しています。皆さんは、朝起きてから寝るまでの間に、何をしていますか。着替えをしたり、食事をとったり、顔を洗ったり、学校で勉強をしたり、お友達とお話をしたり、突然頼まれたお買い物をしたり、様々なことに取り組むことに時間を費やして一日を過ごしていませんか。作業療法では、この時間を費やすために取り組んでいるすべてのことを「作業」と捉えています。もし、あなたが、これらの作業に取り組むことができなくなったとしたらどうでしょう。それも、あなたにとってとても大切な意味を持つ作業ができなくなったら…。
作業療法士は、この「人は作業的存在である」という考えのもとに、その人がやりたいこと、やらなければいけないこと、またはすることが期待されていることなど、その人にとって意味のある作業ができるように支援する仕事です。
「作業」の力???人は何かすることで成長する
人は、作業をすることで、元気になったり、楽しい気分になったり…、あるいは、逆にとても辛い思いをしたり、残念な気持ちになったりします。こういった経験から、多くのことを学び、人として成長します。皆さんも、これまでの「~をする」ということを通して今ある自分を作り上げてきたということになります。
作業療法士は、人が「~する」を扱う仕事
作業療法士が相手にしているものは何かというと、病気ではなく、「できない」ということそのものです。その人がやりたいと思っていることや、やらなければならないと思っていること、あるいはすることが期待されていることなど、その人にとって意味のある作業が少しでもうまくできるように支援することが作業療法士の仕事です。これは、病気という人の内部で起こっていることの先にある、暮らしの中に直接存在する問題を扱うことだ、といえます。
人は、病気になって苦しいという問題を抱えることがあります。しかしそれとは異なる次元で「やりたいこと、やらなければならないこと、あるいはすることが期待されていることがうまくできない…」という「時間を費やすこと」に関する苦しみを持つことがあります。
これを『作業機能障害』として捉えています。これは、先ほど述べた作業的存在に関する苦しみということです。つまり、作業療法士はその人が脅かされている作業的存在を扱う仕事とも言えます。
医療における作業療法
誰とするの?
この作業機能障害という苦しみを起こす理由の一つとして、病気やケガが挙げられます。医療の中では、医師、歯科医師、薬剤師や看護師、理学療法士、言語聴覚士など、様々な職種とチームを組んで仕事をしています。何をするの?
医療現場では、病気によって起こる暮らしに関する問題(作業機能障害)を直接扱うことにより、その人の存在意義をいち早く確立するように支援します。医療は、心や体が正常とは異なる状態に対して、元に戻そうとする仕事と言えますが、作業療法は元の暮らしに戻すという考え方だけではなく、新たな暮らしを再構築する仕事とも言えます。医療の中で、作業療法が求められているのは、この「暮らしの再構築」という点であり、作業療法独自の発想です。
どんな方法でするの?
自転車に乗ることができるようになるためには、自転車の乗り方という書籍を読むだけでは乗れるようにはなりません。重要なことは「実際にやってみる」ということです。前に説明した通り、人は実際に何かをすることを通して成長します。つまり、自転車に乗るために必要な様々な能力は、様々な他の作業(例えば遊ぶこと)を通して準備されていると考えることができます。そして実際に「自転車に乗る」という作業に取り組むことによって「自転車に乗ることができる」ようになるわけです。このように実施する(作業に取り組む)と様々なことを経験します。この経験が次の実施にとって「栄養剤」となります。このことはとても重要で、作業療法士は、対象者に様々な経験をさせることを仕組みますが、その経験が、作業機能障害の解決のために常に良い経験となるよう仕組むわけです。